2006年 12月 11日
それはないでしょう
「女将さんこれってどう思います?」
そう言って一枚のチラシを持ってきた。 それは、町はずれの新興住宅地にコンビニがオープンしたことを告げるチラシだった。 住所を確認すると、 「いわき市○○土地区画整理区域13-48」と書いてある。 「これってちゃんとした住所でしょうか。」 彼女が疑問に思うのも当然だと思うが、そのチラシには「あなたの街にも堂々オープン」と書いてある。 やはり、キチンとした街のキチンとした住所だと思う。 しかし、あまりの味気なさに、思わず失笑してしまった。 そう言えば最近、非常に短い住所が増えているようだ。 極端な例で言えば、「○○市△丁目×番地」。たったこれだけで手紙が届く住所に遭遇したことがある。 確かに便利かもしれないが、住人達は、その土地を「私の街」として愛することが出来るだろうか。 私が今まで出会った中で一番好きな住所は、 「いわき市田人町旅人字水呑場1」 その住所を見ると、瞬時に過去へとタイムスリップする。 時は夏、笠をかぶり、わらじを履いた旅人が一人。 もうずいぶん長いこと歩いている。 ふと見ると、こんこんと湧き出る清水がある。 ここらでちょっと休んでいこうか。 一口掬って飲んでみる。 その水の美味いこと、美味いこと。(実際その辺りの水は美味しいです)旅の疲れが一瞬にして消えた。 そんな姿が目に浮かぶ もう一つ好きな住所は 「いわき市豊間字兎渡路」。 たまたまその時兎がさっと跳びだしたのか。 そうなればその土地では兎が非常に珍しく、だから「この路を兎が渡っていたよ」と後世にまで語り継がれてきたのだろうか。 それともそこにはよく兎が出没し、それがちょっとした名所になっていたのかもしれない。 はたまた、兎がよく通る路なので、兎猟の穴場だったとも考えられる。 いずれにしても、どうせ名前をつけるなら、そんなふうに、その土地にあったストーリー性のある地名が良い。 冒頭の地名が、仮の名称であってくれることを祈っている。
by iwasomami
| 2006-12-11 22:43
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