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お気にめすまま

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それはないでしょう

「女将さんこれってどう思います?」
そう言って一枚のチラシを持ってきた。
それは、町はずれの新興住宅地にコンビニがオープンしたことを告げるチラシだった。

住所を確認すると、
「いわき市○○土地区画整理区域13-48」と書いてある。
「これってちゃんとした住所でしょうか。」
彼女が疑問に思うのも当然だと思うが、そのチラシには「あなたの街にも堂々オープン」と書いてある。
やはり、キチンとした街のキチンとした住所だと思う。
しかし、あまりの味気なさに、思わず失笑してしまった。

そう言えば最近、非常に短い住所が増えているようだ。
極端な例で言えば、「○○市△丁目×番地」。たったこれだけで手紙が届く住所に遭遇したことがある。

確かに便利かもしれないが、住人達は、その土地を「私の街」として愛することが出来るだろうか。

私が今まで出会った中で一番好きな住所は、
「いわき市田人町旅人字水呑場1」
その住所を見ると、瞬時に過去へとタイムスリップする。

時は夏、笠をかぶり、わらじを履いた旅人が一人。
もうずいぶん長いこと歩いている。
ふと見ると、こんこんと湧き出る清水がある。
ここらでちょっと休んでいこうか。
一口掬って飲んでみる。
その水の美味いこと、美味いこと。(実際その辺りの水は美味しいです)旅の疲れが一瞬にして消えた。

そんな姿が目に浮かぶ

もう一つ好きな住所は
「いわき市豊間字兎渡路」。
たまたまその時兎がさっと跳びだしたのか。
そうなればその土地では兎が非常に珍しく、だから「この路を兎が渡っていたよ」と後世にまで語り継がれてきたのだろうか。
それともそこにはよく兎が出没し、それがちょっとした名所になっていたのかもしれない。
はたまた、兎がよく通る路なので、兎猟の穴場だったとも考えられる。

いずれにしても、どうせ名前をつけるなら、そんなふうに、その土地にあったストーリー性のある地名が良い。

冒頭の地名が、仮の名称であってくれることを祈っている。
by iwasomami | 2006-12-11 22:43