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お気にめすまま

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我が道を行く義母

初めて義母に会った時、彼女はロングドレスを着ていた。
いや、ロングドレスというより、もう少し普段着に近いワンピースの長い服といった方が良いかもしれない。

とにかく義母は、他の人が普通あまり着ていないものを着るのが好きだった。

今では珍しい正統派もんぺを街着にしたり(それを義母は大島紬で作った)、薄綿を入れた袖のない羽織、たくさんの綿を入れ、長めに作った前袷の半天など、そんな服をさらっと着こなすのが上手だった。

そんな義母が、孫達を放っておくハズがない。

初めての女の子が生まれてまもなく、どこそこの風習だとか言って、娘の頭をこけしのようにしてしまった。
ビンコだけを残し、同じ長さに短く丸く切りそろえられた娘は、どこから見てもこけしそのものだった。

こけし娘を連れて町に出ると、多くの人が必ず振り返った。わざわざ声を掛けてくる人までいた。
そんな反応が恥ずかしいやら、嬉しいやらで、義母の気持ちが半分だけ理解出来た。


また義母は、息子が保育園の時、一枚の服を作ってくれた。
通園服が自由なのを良いことに、またもやもんぺを作ったのだ。
紺色の絣のもんぺを着せられた息子は、まるで小さな忍者のようで、そんな姿で園内を走り回る息子は、親ばかのようだが、何とも言えずに可愛かった。

これは全く義母の作戦勝ちだったと思う。

そのうち義母は、とうとう私までその手に掛けようと思いたち、ある日チャイナドレスを買ってきた。
最初は辞退していた私だが、そのうちふとその気になってしまい、短い間だけだったが、それが旅館での私の制服となった。
全く、若気の至りとしか言いようがない。

そんな義母も今年で83才になる。
今でも現役の義母は、相変わらず彼女なりのおしゃれを楽しんでいる。

そんな義母のお陰で、我が家のアルバムには、他家には見られないような変わった写真が残されている。
by iwasomami | 2006-12-06 21:43