お気にめすまま

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殺されるー

ちょっと昔の恐怖の実体験。

ある1組の中年のカップルが宿泊した。
女性は笑顔のきれいな方だった。
私の着物姿を見て、きれいね、なんて褒めてくれたりもした。

翌日お帰りになった後、忘れ物に気づいた私は、早速宿帳に記載されてある彼女の家に電話をかけた。
大概のお客様は、忘れ物のお知らせをすると、大変恐縮がって、宅急便で送り、一件落着するものだが、彼女は違っていた。

「届けて頂戴。」
「えっ、お届けするのですか。」
聞けば、車で20分位の所だというので、変則的ではあるが、大凡の場所を伺い届ける事にした。

ところが探しても探してもそれらしい家が見あたらず、仕方がないのでまた電話をかけ、その旨を伝えた。
すると、やたらとヒステリックな声で、
「○○タクシーの○○さんに聞けば、わかるから。」
と言われ、今度はタクシーに乗って、出かけた。

この時点で、相手は普通の状態ではないと判断し、運転手の方に、一緒についてきてくれるよう頼んだ。

いよいよ彼女の家の玄関に立つ。
彼女が出てきて、仁王立ち。
目がつり上がった顔というものを初めて見た。
とにかく、品物を返して早く帰りたかった。

彼女は大声で、「ドロボウ」などと訳のわからない罵倒を私に浴びせかけた。
私は、品物を上がり口に置き、
「失礼致します。」
と帰りかけた、と、その時、
彼女が、出てきた。
「まずい」
私は、その時初めて振り返った。
あれほどお願いしていた運転手さんは、既に、タクシーへと逃げ去っていた。
私も全速力でタクシーへ。
急いで車に乗り込み、ドアをロックした。
間一髪、彼女がドアを開けようとしている。
「チクショー、人殺し。」
と叫びながら。
「早く車を出して。」
運転手さんも慌ててスタートさせた。

後ろを振り返ってみると、そこには裸足で立っている彼女がいて、まだ何か叫んでいた。

怖かった、殺されるかと思った。

彼女の亡くなったご主人と運転手さんは友達で、よく家にもおじゃまして、彼女とも知り合いだった由。
あまりの変わりように、運転手さんも、
「普通じゃない」
という言葉を繰り返すばかりだった。

それにしても私を置いて逃げるなんて酷いじゃないですか。
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by iwasomami | 2006-11-18 00:21 | 旅館の話