2006年 11月 18日
殺されるー
ちょっと昔の恐怖の実体験。
ある1組の中年のカップルが宿泊した。 女性は笑顔のきれいな方だった。 私の着物姿を見て、きれいね、なんて褒めてくれたりもした。 翌日お帰りになった後、忘れ物に気づいた私は、早速宿帳に記載されてある彼女の家に電話をかけた。 大概のお客様は、忘れ物のお知らせをすると、大変恐縮がって、宅急便で送り、一件落着するものだが、彼女は違っていた。 「届けて頂戴。」 「えっ、お届けするのですか。」 聞けば、車で20分位の所だというので、変則的ではあるが、大凡の場所を伺い届ける事にした。 ところが探しても探してもそれらしい家が見あたらず、仕方がないのでまた電話をかけ、その旨を伝えた。 すると、やたらとヒステリックな声で、 「○○タクシーの○○さんに聞けば、わかるから。」 と言われ、今度はタクシーに乗って、出かけた。 この時点で、相手は普通の状態ではないと判断し、運転手の方に、一緒についてきてくれるよう頼んだ。 いよいよ彼女の家の玄関に立つ。 彼女が出てきて、仁王立ち。 目がつり上がった顔というものを初めて見た。 とにかく、品物を返して早く帰りたかった。 彼女は大声で、「ドロボウ」などと訳のわからない罵倒を私に浴びせかけた。 私は、品物を上がり口に置き、 「失礼致します。」 と帰りかけた、と、その時、 彼女が、出てきた。 「まずい」 私は、その時初めて振り返った。 あれほどお願いしていた運転手さんは、既に、タクシーへと逃げ去っていた。 私も全速力でタクシーへ。 急いで車に乗り込み、ドアをロックした。 間一髪、彼女がドアを開けようとしている。 「チクショー、人殺し。」 と叫びながら。 「早く車を出して。」 運転手さんも慌ててスタートさせた。 後ろを振り返ってみると、そこには裸足で立っている彼女がいて、まだ何か叫んでいた。 怖かった、殺されるかと思った。 彼女の亡くなったご主人と運転手さんは友達で、よく家にもおじゃまして、彼女とも知り合いだった由。 あまりの変わりように、運転手さんも、 「普通じゃない」 という言葉を繰り返すばかりだった。 それにしても私を置いて逃げるなんて酷いじゃないですか。
by iwasomami
| 2006-11-18 00:21
| 旅館の話
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