お気にめすまま

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鶴の一声

ふと気がつくと、ピー、ピーという小さな音がしていた。
いや、ピーとは違う、リーンでもないし、ジーでもない。何とも文字では表現不可能な音がずっ鳴り続いていた。
耳慣れない音というものは、大きさに関係なく、非常に耳障りなものだ。まして、それが鳴り続いていると、なおさらのこと。

当初、外から聞こえていると思っていたが、よく耳を澄ませてみると、どうやらその音は、館内のロビーから聞こえてくるようだ。

機械の音か。だとすると、何かが故障したのか。
ああ又修繕費がかさむ。そんな重いが頭をよぎり、ふっと心が沈んだ。

だがやや暫くして、その音の正体がようやく判明した。

秋だということで、主人が電池で鳴る鈴虫の声のイミテーションなるものを買ってきて、フロントの片隅に設置していたのだ。

なんて人騒がせな。

しかし、良かれと思って置いたものだけに、無下に却下するわけにもいかず、一刻も早く電池が切れることを、ただただ祈るのみだった。

フロントの女の子も思いは同じだったようで、一生懸命その機械の上に、石を置いたり、箱に入れたりと、どうにかしてその音が小さくなるよう工夫をしていたが、どんなに音が小さくなっても、耳障りな事には変わりはなかった。

みんながほとほと困り果てていたその時、その側を通りかかったお客様がぽつりと一言、
「なんか、耳鳴りがする。」

その一言で、その偽鈴虫は永久追放となった。




ほっ。
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by iwasomami | 2006-11-02 23:52 | 旅館の話